2020年【学生インタビュー】一般財団法人あしなが育英会-岡崎祐吉様

2020年11月7日(土)に第5回「国際協力・ソーシャルビジネス アジアカンファレンス 2020」を開催しました。

今回のテーマは、「大切にしてきたコト、そして未来に繋いでいくモノ〜現場の葛藤と光〜」です。

本イベント内の“基調講演”と“社会起業家パネルディスカッション”にて登壇されるあしなが育英会の岡崎祐吉さんに活動する上で大切にしていることや寄付に対する考えなどをお伺いました。

岡崎祐吉(おかざき ゆうきち)様

福岡県出身。51歳(2020年当時)。
2歳で父亡くす。奨学金で高校、大学へ。小学から大学まで野球三昧。
大学3年次に1年休学しイスラエルで農業ボランティア。
湾岸戦争も経験。卒業後、あしなが育英会へ。
風呂なしトイレ共同の4畳半アパートの5年で600万円貯め、28歳時にNY留学。英語力ゼロだったが、1日15時間勉強を3年続け、NY大 大学院教育心理学を修了。
帰国後は日本とウガンダを50回往復しながら、あしながウガンダを設立、初代代表に。

継続することの大切さ

ーーー活動する上で大切にしていることを教えてください。

どんなことがあっても続けるということです。

2000年の11月に初めてウガンダに行きました。
そのときに、スタッフが1人か2人しかいないようなローカルの小さなNGO団体の施設を訪れました。“Never Stop” と書かれた小さい事務所の壁を見て、「活動がどんなに規模が小さくても、とにかく続けよう」という思いが込められているのだと思いました。

その張り紙を見て、「1回、2回挑戦して、もう無理だ、可能性がないのではないか」と諦めるのは情けないと思いました。このときに、続けるのが一番大事だと思いました。

“Never Stop”と書かれた張り紙にインスパイアされたのがここまで頑張り続けられた一つの要因だと思います。あしなが育英会としても、遺児たちへの奨学金や教育プログラム提供するなどの活動を50年続けてきたっていうことの意味はあると実感しています。

情熱はあっても資金が集まらなかったり、スタッフが辞めていってしまったりなどの理由で3年とか5年以内になくなる団体も結構あります。しかし、1人でも歯を食いしばって続けていくことにより、いつかまた応援してくれる人が出てくるかもしれないですよね。

そういう意味では、「続ける」というのは全てのことに関して大事だなと思います。

人は夢にしかお金を出さない

ーーー社会的な支持や認知もあり、寄付も相当額集められている団体に成長した理由は何だと思われますか?

当事者の想いを発信し続けてきたからだと思います。

あしなが育英会の創立者であり、現在会長の玉井自身が27歳の時に、母親を交通事故で亡くしました。

当時、医療体制の不備や脳外科医の決定的な不足、保険制度などの守られるべき法的な部分が非常に不十分でした。36日間の昏睡状態の末に母親がなくなった際、「母親の仇をとる」意味で法律や医療など全部勉強し、当事者の声を新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、多くのメディアに投稿して、国や社会に対して異議を唱えたのです。

最初は、母親の仇を取ることがスタートだったけれど、調べれば調べるほど、もっと他にも自分と同じように困っている人や、声をあげたくてもあげられない人が多くいることを知り、その代弁者になっていったのです。

当事者が声をあげるということが継続して成長してきた要因の一つだと思いますね。

また、有難いことに ご寄付が継続して集まるのは、未来に対する希望に焦点を当てた打ち出し方で寄付を募るからだと思います。

多くの団体は前年度の事業報告を提示して、「これだけやりました、来年の予算はこのくらいですからぜひご協力ください」という寄付の募り方が多いと思います。

しかし、あしなが育英会は過去の事例や報告で寄付を集めることはありません。

人は夢にしかお金を出さない」が玉井氏のモットーです。これだけの十何万人の遺児たちが苦しんでいると数字で寄付を募っても誰にも響かないと思います。

でも、たった1人の作文で数十万人の人が動くのです。1人の子の訴えの後ろには多くの親を亡くした子どもたちがいます。この子が高校に行くために、私のお小遣いから少しでも寄付をして力になりたいなどという想いから寄付してくださる方が多いです。

未来のある子たちを一緒に育てていきましょうという態勢が、多くの方に賛同していただけたのだと思います。

想いが込められたお金の価値

ーーーこのコロナ禍で、あしなが育英会の奨学金制度を利用する学生に15万円寄付する記事を拝見しました。そのときの岡崎さん自身の想いと、寄付に関しての見解をお聞きしたいです。

あしなが育英会の奨学金制度を利用する学生は7500人で、その学生の7割以上が母子家庭です。今回のコロナ禍で、真っ先にクビを切られるのが、パートや日雇いなどのお母さん方の職場だったんです。その時、アルバイトをしていた学生たちも、コロナ禍で辞めざるを得ない状態になってしまいました。

あしながの遺児家庭の1ヵ月の平均月収が14万6千円なので、寄付金額を15万円にしました。この15万円でなんとか食べて生き延びてくださいという想いでした。

玉井は、寄付することを決めて1週間以内に送ろうと決断し、理事会には事後報告でした。それくらいスピード感を重視しました。決断して、即行動し、失敗したら修正するつもりでした。「とにかく実行しよう!」というのが、我々のモットーですね。

また、お金はどこから来ているのかが大事だと思います。

ギャンブルで稼いだ15万円、政府から来ている15万円、何処かの誰かがあしなが育英会の遺児の子どものことを想って寄付してくださった100円や1000円が集まっての15万円。

これらの15万円でも、価値が違うと僕らは思っています。想いが込められた その15万円にはお金以上の価値があるのではないでしょうか。

こういう話を、あしなが育英会の学生にもよくします。

毎日学校に行くときに使うバスの運転手の方が毎月500円君たちに寄付をしてくれている方かもしれない、今日乗ったエレベーターのメンテナンスの方、トイレ掃除をするおばちゃんも、もしかしたら寄付してくださっている方かもしれない。そのように支えてくれている人たちのことを忘れてはいけないということは常に話していますね。

お金とともに心も乗せて送られてくる名もなき方々からのご寄付を、奨学金として受け取り、自分が卒業した時にきちんと返還する。そして、その返還金が、再び あしなが育英会の遺児の後輩のための奨学金として循環するんですね。自分が奨学金を返還せず、その流れを止めてしまったら、後輩が困ることになってしまうのです。そのためか、国の奨学金の返還率よりもあしなが育英会の奨学金の返還率の方が高いんですね。

後輩たちも親を亡くすという衝撃的な人生を歩んでいるけれど、先輩たちのロールモデルがあることが、頑張ろうという活力になるんだと思います。

インタビュー後記

インタビュアー 熊野

インタビュー中、終始、岡崎さんの熱く語られる姿に感銘を受け、引き込まれるかのようにお話を伺っておりました。人は未来に対する希望、熱い想いに応援の気持ちを持つということ、そして、想いが込められたお金にいかに価値があるかというお話が特に印象的でした。これからの私の仕事にも通じる内容で、再度記事を読み直しても刺さった部分です。私も応援される人間になれるよう、自分の信念をぶらさず真摯に『Never Stop』で頑張りたいと思います!!

岡崎さん、ご多忙の中素敵なお話をありがとうございました!