代表挨拶及び事業経歴

国際協力の現場で直面した真のニーズ

私がNGOスタッフとして初めてフィリピンに派遣されたのは、2006年のことです。

その頃に出会った最貧困層の子どもたちや青少年たちを取り巻く厳しい現状に、大きな衝撃を受けました。親の都合で高校や小学校すら中退させられ、ゴミ山でリサイクルできる物を拾い、児童労働を強制され学校にも通えなかったり、十分な食べ物すら与えられず空腹でいる子どもたち、もしくは路上生活を強いられていたり、人身売買の犠牲者となる子たち……数多くの「危険にさらされた子どもたち」の存在を改めて目の当たりにし、気づくと涙が頬を伝わっていることが何度もありました。そして、彼らが成長し、親となってもその子どもたちがまた同じ道をたどってしまう、「貧困の負の連鎖」から抜け出せない現実──。

そんな不条理な社会の中で彼らの生きる道を共に創っていくために、彼らに寄り添って生きることを選びました。

この貧困の連鎖を断ち切るためには、まずは彼ら自身が支援に依存することなく、働く意欲と責任感を持って仕事をする“人財(宝のような存在)”、つまりロールモデルの育成の必要性を痛感しました。

また、雇用機会を創出するためにも、まずは社会から見放されている青少年たちが過去の生い立ちや学歴に関係なく、働きたいという希望を持ってさえいれば受け入れる働く場をつくることが必要でした。

ソーシャルビジネス ユニカセ誕生

2009年11月、ユニカセのパートナー団体である各NGOから紹介をしていただいた9名の青少年たちが雇用対象の訓練生として選ばれ、日本人・アメリカ人の学生インターンたちと共に3ヵ月間のユニカセオリジナル研修を実施し、ソーシャルビジネス「ユニカセ」の基礎を一緒に作りました。

2010年5月、ソーシャルビジネス「ユニカセ・コーポレーション」を創立し、同年8月、お客様に健康的なお食事を提供する「自然食レストラン」をオープンさせました。貧困層出身の青少年たちが過去にとらわれずに働ける「レストラン」を舞台として、“雇用”と“育成”を両立させるため、Creating Shared Value(CSV:共通価値の創造、つまり企業が経済的な価値を創造しながら社会課題にも主体的に取り組み社会に対し価値を創造すること)の現場が誕生しました。単なるお店ではなく、貧困の連鎖を断ち切り、危険にさらされた子どもたちが安心して暮らせる社会を実現させることを目的とした草の根事業としてのソーシャルビジネスです。

フィリピンの社会が抱える深刻な貧困問題の前でこの取り組みは大きなチャレンジであり、私自身の闘いでもありました。今はまだ社会を変えることはできないかもしれませんが、いつかユニカセで育った青少年たちが親となり、その子どもたちは食べることができる、学校に行って学ぶこともできる、安心して眠ることもできる、そういう子どもらしい日々を過ごせるようになることこそが社会を変えることにつながるのだと信じ、事業を継続して参りました。失敗も何度もしました。計画通りにいかないことの方が多く、悩むことは尽きませんが、青少年たちや子どもたちが秘めている可能性を共に引き出すことが真のエンパワーメントにつながると思います。

NPO法人 ユニカセ・ジャパンの始まり

また、フィリピンでの取り組みを教訓とし、日本と世界の青少年が自ら気づき行動に移せる“人財“育成を目指し、2013年に日本でNPO法人ユニカセ・ジャパンを設立しました。当初はソーシャルビジネスのレストランを運営することに必死になっておりましたが、ビジネスの持続性を考えた時、青少年育成を強化することは最重要課題でした。

テレビや新聞などでもご紹介いただき、毎年、講演依頼もいただくようになり、レストランオープン以来、毎年、800名様以上の日本人の学生さんや社会人の方々が海を越え、わざわざ日本からもご来店いただけるソーシャルビジネスへと成長しました。

コロナ禍からの再挑戦

2016年に私が病で倒れたことがきっかけとなり、フィリピン人青少年たちが自立し始め、レストラン業務は私抜きでも営業可能にまで成長し、収支も安定してきた矢先、2020年3月、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックで突然の隔離措置が始まりました。食材や薬を購入する目的以外、一切の外出が禁止され、街は閑散とし、レストランも店内飲食が禁止され、急遽、デリバリーとテイクアウトに切り替えましたが、売上は通常の2割まで落ち込みました。世界中がパニックとなり、ユニカセ・レストランも例外ではなく、2021年2月、10年間守り抜いたレストランを閉店するに至りました。

しかし、悩んでも、悩み続けないよう自らを奮い立たせ、オンラインを活用し会えなくてもビジョンを共有することで実現可能な事業展開を試みました。お陰様で、学生を含む日比の青少年たちと共に、国内・海外にて青少年育成を継続しております。

現在もなお、様々な課題は少なくありませんが、諦めず、今、自分たちにできる目の前のことから1つ1つ取り組んでおります。これからも子どもたちが笑顔でいられる社会の実現を目指し、共に学び、共に支え合い進んで参ります。これからもユニカセの歩みを見守っていただければ幸いに存じます。

フィリピン/ソーシャルビジネス「ユニカセ・コーポレーション」創立者
日本/特定非営利活動法人ユニカセ・ジャパン 理事長

中村八千代

代表者及び事業経歴書

(フィリピン):UNIQUEASE Corporation 創立者
(日本):特定非営利活動法人 ユニカセ・ジャパン 理事長
代表者:中村八千代(なかむら・やちよ)

1969年東京生まれ。明治大学商学部卒業後、カナダに留学。

帰国後、父親の会社が倒産したことで、4億円の借金の連帯保証人であることが発覚。10年かけて借金を返済終了後、2006年に途上国の恵まれない子どもたちを支援する「認定NPO法人 国境なき子どもたち(KnK)」の派遣員としてフィリピンに赴任。

2010年、フィリピン、マニラで貧困の連鎖という社会的課題を解決するためソーシャルビジネス「UNIQUEASE Corporation(ユニカセ・コーポレーション)」を創立し、フィリピンの貧困層出身の青少年たちを雇用し、彼らの社会復帰と自立を目指し、ビジネスマナーやマーケティングを含むユニカセオリジナルの人材育成研修を実施。

2013年、実践的な青少年育成事業を強化するため「特定非営利活動法人 ユニカセ・ジャパン」を設立。フィリピンと日本の青少年たちが異文化交流を通して実際の事業企画や運営に携わる機会を提供。

現在に至るまで、フィリピンでの教育支援を行う傍ら、日本の学生へ講演活動や研修事業も実施。

事業経歴

  • 2010年
    フィリピンで貧困の連鎖という社会的課題を解決するためソーシャルビジネス「UNIQUEASE Corporation (ユニカセ・コーポレーション)」をマニラ首都圏のマカティ市にて創立。貧困層出身のフィリピン人青少年たちを雇用し、彼らの社会復帰と自立を目指し、ビジネスマナーやマーケティングを含むユニカセオリジナルの人材育成研修を実施。

  • 2011年
    日本の学生の人材育成のため、国内の大学を中心とした講演活動を開始。

  • 2013年
    「特定非営利活動法人 ユニカセ・ジャパン(UJP)」を設立し、フィリピン人青少年たちの人材育成を日本からサポートしながら、国内外での講演活動・イベントを実施。

  • 2015年
    日本国内で社会起業家を目指す若者たちへの研修事業やワークショップを開始。フィリピンのNGOから依頼を受け、ユニカセ青少年スタッフの講師派遣を行い研修提供。

  • 2016年
    金融経済教育の普及活動に取り組んでいる、SMBCコンシューマーファイナンス株式会社と協働し、小学校へ出張授業実施。

    ユニカセ主催国際協力・ソーシャルビジネス アジアカンファレンス」を開始。アジア各国で活躍している日本人社会起業家たちが集う「アジアカンファレンス」を立案し、参加者150名規模のイベントを主催。現在も毎年、継続中。

  • 2020年
    一般社団法人 次世代教育・産官学民連携機構に正会員として加盟、授業の提供を開始。

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