ユニカセフィリピンスタッフの成功談~次世代育成に取り組むロールモデルの事例~

ロールモデルとは

ユニカセでは、フィリピンの貧困層出身者が社会参画した結果、経済的・精神的自立を果たし、貧困を脱却した成功例のことを「ロールモデル」と呼んでいます。

心にトラウマを抱える不安定な青少年たちと始めたレストランの運営は、決して楽な道のりではありませんでした。自信を喪失したり、家族に足を引っ張られてしまった青少年たちも多く、ビジネスとして十分なサービスの提供をできないことも多々ありました。

2010年の創立以来、ユニカセの存在意義や可能性をご理解いただき、応援してくださったお客様やご支援者様に支えられ、皆様と起こした奇跡の連続で今があります。貧困層出身者の青少年たちが、どんなに辛い環境で生まれ育っても、笑顔で仕事ができるまでに人生を変えることができたのは、彼ら自身の努力と、彼らを支え続けてくださっている皆様のお陰です。心から感謝申し上げます。

貧困が生み出す負の連鎖から脱却し、ユニカセの次世代育成に貢献するベス

ユニカセ・フィリピンの代表 兼 メイントレーナーとして、トレーナー候補生を指導するベス

ユニカセが提供するトレーニングでメイントレーナーを務めるまでに成長した、ロールモデルのベスについて紹介します。

貧困から脱却し、自身の出身地でトレーニングを提供するベス

ベスがユニカセと出会うまで

ベスは、フィリピンのケソン市にあるごみ山に隣接しているパヤタスで幼少期を過ごしました。毎日食べることもままならず、小学生の頃から父親と共にごみ山でスカベンジング(ごみの中からリサイクルできる物を探して換金)をして日々の生活をやりくりしていました。中学1年生の時、経済的な理由で中退を余儀なくされ、自らアルバイトでお金を貯めて復学するも、卒業後の進学は諦めなければならない状況でした。高校や大学に進学できなかった15歳の彼女にとって、安定した仕事を得ることは難しく、日々支援を受けることだけを考えていました。しかし、いつ支援を受けられるかは保障されておらず、仮に支援を受けられたとしても、いつその支援が止まるかはわかりません。ベスは、成長するにつれて、保障されていない支援に頼った生活ではなく、安定的に生活できる方法が必要だと気づいたと当時を振り返ります。

ユニカセの訓練生としての経験

ビジネストレーニングを受ける訓練生時代のベス

17歳の時、ベスはユニカセの1期生として、青少年ビジネストレーニングへ参加し始めました。就労経験に加えて、ユニカセの実践的なトレーニングを通じてビジネススキルを身につけたことで、自分に自信が持てるようになりました。その結果、臆せずお客様とのコミュニケーションがとれるようになり、またチャンスを自ら掴んで目標達成に向けて努力を重ねれば、自分の人生を変えられると気づくことができました。

その後、彼女は貧困を脱却したロールモデルへと成長していきました。

メイントレーナーへの成長と試行錯誤

メイントレーナーとして、訓練生や日本の学生スタッフに指示するベス(右)

現在、彼女はユニカセ・フィリピンの代表 兼 次世代育成事業のメイントレーナーとして、貧困層の青少年たちにビジネストレーニング食育事業を提供しています。しかし、次世代育成は一筋縄ではいかず、多くの場面で忍耐力が必要です。特に、仕事よりも人生を楽しむことに重きをおいている現代の青少年たちや、周囲への関心を示さない訓練生たちと関わることもあり、人を育てる難しさに直面しています。

そこで、彼女は訓練生を効果的にサポートするため、一人ひとりの強みや特技を考慮して役割を分担しています。また、できる限り個別に話をする機会を作り、訓練生が抱えている悩みや課題を聞くことで、必要なサポートを行うなどの工夫をしています。

訓練生が彼女に、「素晴らしいトレーニングを提供してくれて、本当にありがとう!私たちの人生が大きく変化しました!」と感謝された時、彼女はトレーナーとしてのこれまでの努力が報われるようです。日々、試行錯誤しながらも、ベスは自らの仕事にやりがいを感じていると目を輝かせて語ります。今の訓練生と同じように、ベス自身が過去にユニカセの訓練生として学び続け、困難を乗り越えた経験があり、その努力と経験が彼らを支える上での糧となっているようです。

また、日々トレーナー候補生や訓練生をサポートしていくうちに、彼らに様々な変化が現れてきました。これまでは、ただベスの指示に従うだけだったトレーナー候補生が、トレーニングを進めるうちに、食育事業を受ける母親や女性たちのことを自ら考え、意見やアイディアを積極的に提案するようになりました。ベスも、彼らとの意見交換を通じて学ぶことが多く、学び合うことの楽しさを感じています。

ベスが育成した訓練生(グレア)の声

訓練生のグレアと共に(左)

グレアは、ベスがトレーナーを務める「English Training(英語研修)」や、「オンライン食育」などに参加しているユニカセ訓練生の1人です。グレアは、トレーニングを受ける中で、「貧困は、夢を追い求める中で障害にはならない」という新たな気づきを得ることができました。地域の人たちと一緒にコミュニティーを良くしたいというトレーナーたちの想いがグレアにも伝わり、彼女自身もより良いコミュニティーを目指す気持ちを抱くようになりました。その結果、ユニカセの活動に多く参加してトレーナーと関わることで、新しい挑戦への勇気や他者への思いやり、さらには同世代の若者を勇気づけてリーダーシップを発揮する大切さも学んでいます。

グレアは今後もユニカセのサポートを受けながら、 経済的な制約に屈せず学び続けることで、良い人生が送れるようにしたいと考えています。現在は舞台俳優を目指して大学で勉強しており、将来的にはユニカセのトレーナーになることを目標としています。

ベスが抱く今後の目標

来日の際、カフェを見学するベス(中央)とユニカセ・フィリピンのメンバーたち

ベスは現在、3児の母親として育児に奮闘しながら、今後もユニカセ・フィリピンでの活動を続けたいと考えています。それは、貧困層出身という背景に関わらず、自分の状況は自分で変えられるという経験を次世代にも伝え、サポートしていきたい気持ちがあるからです。

また、全ての子どもたちの貧困を解決することはできずとも、自分ができる範囲で着実に取り組んでいきたいという強い想いが、現在の彼女の次世代育成への情熱を支えています。

そして、将来、ベスはユニカセ・カフェを開くという夢を持っています。現在、ユニカセの訓練生や食育事業を受けた女性たちがトレーニングで学んだことを実践できるような場は限られています。そこで、彼女は、働きながら学びをインプットしつつ、収益も得ることができる場所を設立することを目指しています。

ロールモデルが起こす貧困の現場でのエンパワメント

現在、貧困の現場で直面する課題を深く理解しているベスのようなロールモデルたちが、ユニカセで培った学びを自身の出身地で広め始めています。 彼ら自身の言葉で成功体験を共有し、次世代がより良い未来を築けるようにサポートするこの循環は、コミュニティー全体のエンパワメントにも大きく貢献しています。実際に、グレアのような訓練生や食育の参加者たちは、ロールモデルの姿を手本に、主体性を持って行動するための第一歩を踏み出しています。

自身の経験を基に、次世代の青少年たちに働きかけ、知識や知恵を伝えるロールモデルたちの姿は、単なる裨益者だった頃の彼らの姿とは全く異なり、飛躍的に成長しています。10年以上にわたって育成してきたロールモデルたちのこうした行動やそれぞれの変化は、貧困の当事者一人ひとりの人生を変え、ユニカセの活動が確実に前進していることを証明しています。

貧困の現場で直面する課題は一朝一夕で解決できるものではありません。しかし、地道な努力を積み重ねることで、少しずつ状況を改善し、未来への道筋を作ることができています。どんなに困難な状況でもあきらめず、失敗から学んで立ち上がり、現在も最前線で活動を続けるロールモデルたちの姿勢は、ユニカセの誇りであり、私たちの原動力となっています。

立場を超えたその先へ

今後も、一人ひとりとの深い関わりを大切にし、支援者と裨益者の枠を超えた日比の「共創」の可能性を広げることに注力していきます。また、長期的な視点で未来を見据えて青少年の行動変容を見守りサポートする姿勢で、未来を担う次世代の育成を継続して参ります。

こうしたユニカセの活動は、皆様の温かいご支援によって支えられております。
私どもの次世代育成事業をご支援いただければ幸いです。

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ヒストリー(UNIQUEASE Corporation(UPhils)/ユニカセ・フィリピンの活動)

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