私がNGO の派遣ではじめてフィリピンを訪れたのは、2006 年のことです。そしてその際に知った貧困層の青少年を取り巻く厳しい現状に、大きな衝撃を受けました。親の都合で高校や大学を中退させられる者、ゴミ拾いをしてスラムに生きる者、ストレートチルドレンとして過ごす者、人身売買の犠牲者となる者……そんな数多く「危険にさらされた子どもたち」の存在です。そして、彼らが青年になり、親となってもその子どもたちがまた同じ道をたどる、貧困の連鎖から抜け出せない現実──。
そんな不条理な社会の中でも、彼らの生きる道を共に見つけていきたい、強くそう思いました。
想像以上にフィリピンは学歴社会です。デスクワークはもちろん、カフェのウェイトレスに就職できるのも大卒のみ。その上、貧困層に対する差別も根強く、運よくNGO の支援を受けて大学を卒業した者ですら就職先が見つからず、将来が見えません。
私は、この貧困の連鎖を食い止めるには、なにより雇用機会の創出が必要だと考え、2010 年に社会的企業「ユニカセ・コーポレーション」を設立しました。運営するレストランを舞台に雇用と教育を実施し、貧困の連鎖を食い止めて危険にさらされた子どもたちを減らすことを目的としています。この取り組みは大きなチャレンジです。フィリピンの社会が抱える深刻な問題の前では微力かもしれませんが、それでも社会を変える可能性を秘めています。今すぐに変えることはできなくても、現在ユニカセ・コーポレーションで働く青少年たちが10 年後、20 年後に変えていってくれると信じたい。
そして、その思いに賛同いただいた皆様とともに2013年に日本でNPO法人ユニカセ・ジャパンを設立いたしました。
日本と世界の青少年が夢を描き、大きく羽ばたける社会創りを目指して活動を開始しています。
さまざまな課題は山積していますが諦めず、いま自分たちにできることから始めよう。その想いをここユニカセで形にしたいと願っています。
フィリピン/ソーシャルレストラン「ユニカセ・コーポレーション」創立者
日本/特定非営利活動法人ユニカセ・ジャパン 理事長
中村八千代
■代表者及び事業経歴書
○団体(フィリピン):UNIQUEASE Corporation 創立者
○団体(日本):特定非営利活動法人 ユニカセ・ジャパン 理事長
○代表者経歴:中村八千代(なかむら・やちよ)
1969年東京生まれ。明治大学商学部卒業後、カナダに留学。
帰国後、父親の会社が倒産し連帯保証人として4億円の借金を背負う
ことに。10年かけて借金を返済後、2006年に途上国の恵まれない子どもたちを支援する非政府組織(NGO)「国境なき子どもたち(KnK)」の派遣員としてフィリピンに赴任。
2010年にソーシャルビジネス「UNIQUEASE Corporation(ユニカセ・コーポレーション)」を創立し、貧困層のフィリピン人青少年の雇用機会創出を目的としたユニカセ・レストランをマニラにオープンした。
2013年には実践的な青少年育成事業を強化するため「NPO法人 ユニカセ・ジャパン」を設立。フィリピンと日本の青少年たちが異文化交流を通して実際の事業企画や運営に携われる機会を提供している。
現在に至るまで、レストランでの教育・運営をする傍ら、日本の学生へ講演活動や研修事業も継続。
■表彰歴
2013年 (日本)日経ソーシャルイニシアティブ大賞ファイナリスト
2017年 (フィリピン)GOLDEN GLOBE ANNUAL AWARDS 2017 受賞
2018年 (フィリピン)GOLDEN GLOBE ANNUAL AWARDS 2018 受賞
2019年 (フィリピン)PHILIPPINE SOCIAL MEDIA STAR BRAND AWARDS 2019 受賞
2020年 (日本)第7回 プラチナ・ギルド・アワード 受賞
■事業経歴
2010年 フィリピンで貧困の連鎖という社会的課題を解決するためソーシャルビジネス
“UNIQUEASE Corporation (ユニカセ・コーポレーション)”をマニラ首都圏のマカティ市にて創立。貧困層出身のフィリピン人青少年たちを雇用し、彼らの社会復帰と自立を目指し、ビジネスマナーやマーケティングを含むユニカセオリジナルの人材育成研修を実施。
2011年 日本の学生の人材育成のため、国内の大学を中心とした講演活動を開始。
2013年 特定非営利活動法人 ユニカセ・ジャパンを設立し、フィリピン人青少年たちの人材育成を日本からサポートしながら、国内外での講演活動・イベントを実施。
2015年 日本国内で社会起業家を目指す若者たちへの研修事業やワークショップを開始。
フィリピンのNGOから依頼を受け、ユニカセ青少年スタッフの講師派遣を行い研修提供。
2016年 アジア各国で活躍している日本人社会起業家たちが集う「アジアカンファレンス」を立案し、参加者150名規模のイベントを主催。現在も毎年、継続中。